こどもの実行(遂行)機能
就学前のこどもの発達を考える上で、運動機能(粗大・微細)・言語社会機能の発達とともに実行(遂行)機能の発達を考えることは大変重要です。
実行(遂行)機能は物事を計画し、順序立てて実行する機能をいいます。成人の高次脳機能障害では前頭葉の機能障害の際に生じるとされています。
赤ちゃんの場合は前頭前野は生後7~8か月から機能しだすと言われています。この時期の赤ちゃんに対する有名な実験に「A not B」課題というものがあります。発達心理学者のピアジェが著書に記述しています。Aの容器に鈴をいれて遊ばせた後、赤ちゃんの見ている前で鈴をBの容器に移し替えた時、8ヵ月くらいの赤ちゃんは再びAの容器に手を伸ばすという実験です。この現象が起きる理由としてピアジェは物の永続性に対する理解が不十分なために起こると考えましたが、現在ではその説は余り支持されなくなってきているようです。Aに入っている記憶とBに入っている記憶の適切な選択が困難というワーキングメモリーの未熟さを原因とする説や、Aの容器で遊んだという前の記憶を抑制することができないという抑制機能の未熟さを原因とする説などをとる専門家が多くなってきているようです。
いずれにしても前頭葉(特に前頭前野)の活動が生後8ヵ月くらいから活発になること、その後も様々な経験と脳の成長の相互作用で実行機能が発達していくこと、実行機能の未熟さが運動や行動の障害になっているこどもが多くいることを知っておくことは重要と思います。
障害を持っている幼児で「ドアをみたらあける」「バギーをみたら乗って帰る」など自分の記憶している行動パターンを抑制できないで怒っているこどもを時々みかけます。記憶抑制ができない子どもの場合はドアやバギーを最初から見えないようにしておくことで過去の記憶を抑制することができます。そうすると難なく別の活動に向かえたりします。ただ単に記憶が抑制できないだけでなく、情緒的な不安を強く伴って泣いている子どもの場合は時間をかけてリラックスしてもらう必要があります。
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